抗がん剤治療にかかる費用(薬剤費)

基本的に日々の業務の中での覚え書きになります。がん薬物療法における安全性や薬剤費(薬価)の概算などを中心に記載していますが、抗がん剤治療を受けている患者さまの経済的不安の解消につながれば幸いです。

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悪性リンパ腫は、リンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞)に由来する悪性腫瘍で、リンパ節が腫れ、腫瘤ができ、ホジキンリンパ腫(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)に大別されます。ホジキンリンパ腫はリンパ節で発病することが多いのですが、全身のあらゆる臓器に発生する可能性があります。

病気が治癒する可能性(予後)や治療法は病期、腫脹しているリンパ節の大きさ、症状の種類、年齢、性別などによって異なります。ホジキンリンパ腫に対する有効な治療法には放射線療法と化学療法があります。他のがんに比べて、ホジキンリンパ腫は放射線療法や化学療法がよく効くがんであることが分かっています。

限局期(Ⅰ期~Ⅱ期)
標準的な化学療法としてアドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンによる併用療法(ABVD療法)を4コース行った後に放射線療法を追加します。

進行期(Ⅲ期~Ⅳ期)
標準的な化学療法は、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンによる併用療法(ABVD療法)です。1コースに2回(1日目と15日目)投与し、4週毎に6~8コース行われます。症状によっては、化学療法終了後に放射線療法を追加することもあります。


<ABVD療法>
ADR 25mg/㎡ day 1、15 (4週ごと)
BLM 10mg/㎡(最大15mg) day 1、15 (4週ごと)
VLB 6mg/㎡(最大10mg) day 1、15 (4週ごと)
DTIC 375mg/㎡ day 1、15 (4週ごと)

【薬剤費の計算】
今回は、身長170cm、体重60kg、体表面積1.65㎡の患者を想定して計算してみます。

アドリアシン(ADR) 25mg/㎡×1.65㎡=41.25mg
2,326円(10mg/V)×5=11,630円
ブレオ(BLM) 10mg/㎡×1.65㎡=16.5mg→最大15mg
1,979(5mg/V)×3=5,937円
エクザール(VLB) 6mg/㎡×1.65㎡=9.9mg
3,274円(10mg/V)×1=3,274円
ダカルバジン(DTIC) 375mg/㎡×1.65㎡=618.75mg
4,365円(100mg/V)×7=30,555円

よって、ABVD療法1回にかかる薬剤費は、51,396円(約5万円)です。
これを1コースに2回、限局期だと4コース、進行期だと8コース行うわけですから、
ABVD.jpg限局期:51,369円×2×4コース=411,168円(約40万円
進行期:51,369円×2×8コース=822,336円(約80万円
になります。

健康保険適応で3割負担として計算すると、限局期は約12万円(4ヵ月)、進行期は約24万円(8ヵ月)になります。
冒頭にも記したとおり、ホジキン病は治癒する可能性が高いので、経済的な負担もあると思いますが、積極的にお勧めできる治療法と考えています。
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小細胞肺がん

他の抗がん剤や放射線による治療を受けたことがない小細胞肺がんの患者33名を対象に臨床試験が行われました。
カルセドによる治療を行い、がん病変にどのような変化がみられるか調べた結果、25名(76%)の患者でがん病変の縮小が確認されました。

非小細胞肺がん

他の抗がん剤や放射線による治療を受けたことがない非小細胞肺がんの患者を対象に2つの臨床試験が行われました。それぞれ61名と60名の患者が対象です。
カルセドで治療を行い、がん病変にどのような変化がみられるかを調べた結果、28名(23%)の患者でがん病変の縮小が確認されました。

副作用は、好中球減少(95.0%)、白血球減少(93.9%)、赤血球減少(92.3%)、血小板減少(47.0%)、脱毛(70.4%)、食欲不振(65.7%)、吐き気・嘔吐(58.6%)、発熱(29.8%)、下痢(16.0%)、口内炎(12.7%)、静脈炎(4.4%)がみられました。

【効能・効果】
非小細胞肺癌、小細胞肺癌

【用法・用量】
カルセド通常、成人にはアムルビシン塩酸塩として45mg(力価)/㎡(体表面積)を、1日1回3日間連日静脈内に投与し、3~4週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。


薬剤費の計算です!
身長170cm、体重60kg、体表面積1.65㎡の男性を想定し薬剤費を計算してみたいと思います。

45mg/㎡×1.65㎡=74.25mg
17,182円(50mg/V)+7,684円(20mg/V)×2=32,550円×3日間=97,650円

よって、カルセドによる治療1コースにかかる薬価は約10万円です。3割負担だと約3万円で、これを3週間毎に繰り返します。
カルセドは非小細胞肺がんや小細胞肺がんの二次治療で使用されますが、もともと薬価が安いので、アリムタを含んだ治療に比べると、経済的にも優しい治療法になると思われます。
イレッサ訴訟は、非小細胞肺癌治療薬であるゲフィチニブを服用し、間質性肺炎などの副作用で死亡または増悪したなどとする患者や遺族が、国と製薬会社を相手取り、損害賠償を求めているものです。

当初、イレッサは、臨床的因子に基づいたEGFR-TKIの個別化治療として、腺癌、女性、非喫煙者、アジア人種がEGFR-TKIの有意な効果予測因子であるとして使用されてきましたが、現在は、EGFR遺伝子変異に基づいた個別化治療に変わってきました。つまり、↓に示す「IPASS」試験などを解析したところ、EGFR遺伝子陰性例には初回治療としてイレッサを使うべきではないと言うことが分かってきました。

「IPASS」試験は、アジアで治療歴のない進行非小細胞肺癌の治療(ファーストライン治療)として、イレッサ(ゲフィチニブ)の単独療法の効果を評価する初めての第3相臨床試験です。
カルボプラチン/パクリタキセル療法と比べて無増悪生存期間(PFS)で上回り、さらに忍容性も確認されました。


セカンドライン治療として期待されていたイレッサが、間質性肺炎などの副作用で期待を裏切られた形となっていましたが、ここ最近は遺伝子変異の状況を把握して治療することにより変異陽性例では、初回治療薬として有用な薬剤として浮上してきた訳です。


【効能・効果】手術不能又は再発非小細胞肺癌
【用法・用量】通常、成人にはゲフィチニブとして250mgを1日1回、経口投与する。

薬剤費の計算です。
イレッサ250mg錠は、6,526円/1錠です。
よって、6,526円×31日=202,306円(約20万円/月)×12ヵ月=2,427,672円(240万円/年)です。
ハーセプチン(トラスツズマブ)は、HER2陽性乳がん患者の治療薬として、約3年前より術後補助療法にも健康保険を利用できるようになりました。それは術後補助療法にトラスツズマブを1年間投与した群と投与しなかった群では、再発のリスクを36%、死亡のリスクを34%下げることが、大規模術後補助療法の臨床試験HERA試験で明らかにされたからです。

術後補助療法として利用する場合、1日1回トラスツズマブを初回投与時は8mg/kg、2回目以後は6mg/kgを3週間間隔で点滴静注します。

今回も、身長155cm、体重50kg、体表面積1.42㎡の女性を想定し、薬剤費を考えてみたいと思います。

ちなみに、ハーセプチンによる術後補助化学療法は1年間とされていますので、1年間を単純に3週間で割って全18回投与として計算します。
(副作用などによりスキップした日はカウントせずに1年を超えても全18回投与するか?スキップした日もカウントして全18回投与していなくても1年間で終了するか?は病院によって異なります。)


ハーセプチン初回:8mg/kg×50kg=400mg
56,110円(150mg/V)×2+23,992円(60mg/V)×2=160,204円
2回目以降:6mg/kg×50kg=300mg
56,110円(150mg/V)×2=112,220円

160,204円×1回(初回)+112,220円×17回(2回目以降)=2,067,944円(約200万円

ハーセプチンの投与を1年間追加することにより、再発リスク、死亡リスクを下げると言いますが、薬価で約200万円/1年間と言うことは、約17万円/月になります。ハーセプチン投与の前にはアンスラサイクリン系薬剤やタキサン系薬剤の投与も受けていると思われますので、全体的なことを考えると高額療養費制度の申請が必要になりますね。
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