抗がん剤治療にかかる費用(薬剤費)

基本的に日々の業務の中での覚え書きになります。がん薬物療法における安全性や薬剤費(薬価)の概算などを中心に記載していますが、抗がん剤治療を受けている患者さまの経済的不安の解消につながれば幸いです。

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マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)は、再発または難治性のCD33陽性の急性骨髄性白血病(AML)の治療薬で、抗CD33ヒト化モノクローナル抗体と抗がん剤のカリケアマイシンを結合させた製剤である。

マイロターグの抗体部分は、骨髄性白血病細胞に発現しているCD33抗原に結合する。CD33抗原は他の骨髄の造血細胞にもあるが、正常な造血幹細胞、リンパ系細胞、その他の非造血細胞にはない。マイロターグは静脈内投与され、細胞内に取り込まれるまでは血液中で安定しているが、抗原に結合し細胞内に取り込まれると殺細胞効果を発揮する。

【対象患者】
本剤の使用にあたっては本剤の使用の必要性を慎重に検討すること。また、本剤の使用は他の再寛解導入療法の適応がない以下のいずれかの患者を対象とすること。
再寛解導入療法(シタラビン大量療法等)に不応あるいは抵抗性があると予測される難治性の患者
高齢者(60歳以上の初回再発患者
再発を2回以上繰り返す患者
同種造血幹細胞移植後の再発患者
急性前骨髄球性白血病患者で、再寛解導入療法(トレチノイン療法等)に不応あるいは抵抗性があると予測される患者

【用法及び用量】
通常成人には、ゲムツズマブオゾガマイシン1回量9mg/㎡を2時間かけて点滴投与する。投与回数は、少なくとも14日間の投与間隔をおいて、2回とする。 (本剤は3回以上投与した場合の有効性・安全性は確立していない)

マイロターグ点滴静注用5mgの薬価は、241,096円/1瓶です。
身長170cm、体重60kg、体表面積1.65㎡の患者を想定すると、投与量は 
→ 1.65㎡×9mg/㎡=14.85mg 
→ 241,096円×3瓶=723,288円
よって、1回あたりの治療費は約70万円。3割負担でも約20万円です。これを2回投与するので単純に2倍になります。


【個人的なメモ】
・1.2μm以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを使用する。
・光による影響を受けやすいので遮光下(安キャビ内の蛍光灯を消す)で調製する。調製後の点滴バッグも遮光する。
・注射用水5mLを加え、泡立てないように静かに溶解する。点滴バッグを激しく振とうしない。
・本剤はCYP3A4により代謝される可能性が示唆されている。

【副作用等発現状況】(国内臨床試験成績)
第I/II相臨床試験において、安全性評価対象症例40例全例に副作用が発現した。主な副作用は、発熱38例(95.0%)、血小板減少38例(95.0%)、白血球減少37例(92.5%)、ヘモグロビン減少36例(90.0%)、悪心35例(87.5%)、AST(GOT)上昇35例(87.5%)、LDH上昇34例(85.0%)、リンパ球減少32例(80.0%)、倦怠感31例(77.5%)、ALT(GPT)上昇29例(72.5%)、食欲不振28例(70.0%)であった。


しかし一転...

米Pfizer社は、2010年6月21日、マイロターグの米国内での販売中止を決定し、「Mylotarg」に関する新薬承認申請を自主的に取り下げると発表しました。この製品は、米食品医薬品局(FDA)の迅速承認プログラムが適用された医薬品ではじめて、承認の際に条件とされた市販後臨床試験で臨床利益が示せなかったために、市場からの撤退を余儀なくされました。ただ、日本では今まで通り継続して販売されるようです。
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白血病罹患数は、1999年に男性4,499人、女性3,338人で、2004年の死亡数は、男性4,133人、女性2,915人と男性に多い傾向があります。また、成人白血病のうち約8割がAML(急性骨髄性白血病)で、残りの約2割がALL(急性リンパ性白血病)です。ここではAML(急性骨髄性白血病)について解説します。

AMLの症状は、白血病細胞の増殖とそれに伴う正常造血の障害による各血球の減少で、髄外病変やDIC(播種性血管内凝固症候群)を合併することもあります。

薬物療法はAPL(acute promyelocytic leukemia)とそれ以外のAMLで異なります。まず、通常のAML(APL以外のAML)の薬物療法の治療費を、身長170cm、体重60kgの男性を想定し、体表面積1.65㎡で算出したいと思います。

<寛解導入療法>
IDR 12mg/㎡ day 1~3
Ara‐C 100mg/㎡ day 1~7 
1サイクル

IDR(イダマイシン®) 12mg/㎡×1.65㎡=19.8mg(投与量)
15,331円(5mg/V)×4=61,324円×3日=183,972円
Ara‐C(キロサイド®) 100mg/㎡×1.65㎡=165mg(投与量)
3,768円(200mg/A)×1=3,768円×7日=26,376円

よって、寛解導入1サイクルにかかる薬剤費は210,348円となります。これで寛解に至れば、大量Ara‐C療法を行います。

<大量Ara‐C療法>
Ara‐C 3g/㎡ 1日2回 day 1,3,5 (28日ごと) 
3~4サイクル

Ara‐C(キロサイド®) 3g/㎡×1.65㎡=4.95g(投与量)
6,401円(400mg/A)×13=83,213円×2回×3日=499,278円

よって、大量Ara‐C療法では1サイクルに499,278円かかります。これを4サイクル行った場合、499,278円×4=1,997,112円になります。

AMLではこの2レジメンの化学療法を行うため、210,348円+1,997,112円=合計2,207,460円となり、3割負担でも約66万円かかってしまいます。AMLの寛解率は約80%で長期生存率は30%台であることを考えると...



次にAPL(acute promyelocytic leukemia)の治療費を、先程と同様に身長170cm、体重60kgの男性を想定し、体表面積1.65㎡で算出したいと思います。

<寛解導入療法>
ATRA 45mg/㎡ 分3 完全寛解に至るまで継続
DNR 50~60mg/㎡ day 1~3 
1サイクル

ATRA(ベサノイド®) 45mg/㎡×1.65㎡=74.25mg(投与量)
803.3円(10mg/カプセル)×8=6,426.4円×31日(例えば1ヵ月の場合)=199,218.4円
DNR(ダウノマイシン®) 50mg/㎡×1.65㎡=82.5mg(投与量)
1,947円(20mg/V)×5=9,735円×3日=29,205円

よって、1サイクルに228,423.4円かかります。

<地固め療法>
DNR 50~60mg/㎡ day 1~3 
1~2サイクル

DNR(ダウノマイシン®) 50mg/㎡×1.65㎡=82.5mg(投与量)
1,947円(20mg/V)×5=9,735円×3日=29,205円×2サイクル=58,410円

<維持療法>
ATRA 45mg/㎡ 分3 day 1~15
6‐MP 100mg/㎡ 分1 連日
MTX 10mg/㎡/week 週1回 
3ヵ月ごとに2年間(8サイクル)

ATRA(ベサノイド®) 45mg/㎡×1.65㎡=74.25mg(投与量)
803.3円(10mg/カプセル)×8=6,426.4円×15日=96,396円×8サイクル=771,168円
6‐MP(ロイケリン散10%®) 100mg/㎡×1.65㎡=165mg(投与量)
92円(100mg)×165mg=151.8円×2年=110,814円
MTX(メソトレキセート®) 10mg/㎡×1.65㎡=16.5mg(投与量)  
3,392円(50mg/V)×1=3,392円×2年=352,768円

よって、2年かかる維持療法には、1,234,750円かかります。

APLの薬物療法では、228,423.4円(寛解導入療法)+58,410円(地固め療法)+1,234,750円(維持療法)=合計1,521,583.4円(約150万円)です。3割負担でも約45万円になります。APLでは、ATRAによる分化誘導療法(分子標的療法)導入により、70~80%の患者で長期生存が得られるようになりました。
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