抗がん剤治療にかかる費用(薬剤費)

基本的に日々の業務の中での覚え書きになります。がん薬物療法における安全性や薬剤費(薬価)の概算などを中心に記載していますが、抗がん剤治療を受けている患者さまの経済的不安の解消につながれば幸いです。

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2012年5月29日、待望のクリゾチニブザーコリカプセル)が発売された。
クリゾチニブは、ALKの受容体チロシンキナーゼ(RTK)とその発癌性変異体(ALK融合蛋白および特定のALK変異体)に対するチロシンキナーゼ阻害薬である。2011年3月に希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されている。

【適応】「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」
ALK:Anaplastic Lymphoma Kinase(未分化リンパ腫キナーゼ)
【用法・用量】「通常、成人にはクリゾチニブとして1回250mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。」である。

薬価は、250mg1カプセルが1万1692.30円、200mg1カプセルが9420.80円になった。1日にかかる薬剤費は、1万1692.30円×2=2万3384.60円(約2万3000円)。1ヵ月だと、約70万円。1年間で約850万円。患者の支払額には、3割負担や高額医療で上限があるが、社会的にはかなりきびしい薬価である。


参考までに、他の肺癌治療剤(分子標的薬:内服)です。

イレッサ錠250mg(250mg錠:6526.2円
【効能・効果】EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌
【用法・用量】通常、成人にはゲフィチニブとして250mgを1日1回、経口投与する。
1日の薬剤費は6526.2円。1ヵ月だと約20万円。1年間で約240万円。

タルセバ錠150mg(150mg錠:10347円
【効能・効果】切除不能な再発・進行性で、がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌
【用法・用量】通常、成人にはエルロチニブとして150mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日1回経口投与する。なお、患者の症状により適宜減量する。
1日の薬剤費は10,347円。1ヵ月だと約32万円。1年間で約380万円。


ALK融合遺伝子とは、EML4(Echinoderm Microtubule associated protein-Like4)遺伝子とALK(Anaplastic Lymphoma Kinase)遺伝子が染色体転座により融合したもので、NSCLCのような癌の増殖に重要な役割を果たすと見なされている。ALK融合遺伝子は、非扁平上皮細胞癌の患者や、喫煙歴なしに、より高率に認められることが知られているが、喫煙者や扁平上皮細胞癌患者にも見られる。ALK遺伝子の変化は、年齢、性別、人種、喫煙歴などに関わりなく生じる可能性が考えられている。これまで調査では、非小細胞肺癌患者のうち、3-5%程度がALK融合遺伝子陽性であることが分かっている。


【副作用】承認時までの海外第Ⅰ相試験および国際共同第Ⅱ相試験では、副作用(臨床検査値異常を含む)が96.1%に認められている。主な副作用は、悪心(53.3%)、視力障害(45.1%)、下痢(42.1%)、嘔吐(39.6%)、便秘(27.1%)、末梢性浮腫(25.1%)などであった。また、重大な副作用としては、間質性肺炎、肝不全、肝機能障害、QT間隔延長、血液障害などが報告されている。

視力障害が45.1%ある抗癌剤も珍しい。【重要な基本的注意】には、「視覚障害(視力障害、光視症、霧視、硝子体浮遊物、複視、視野欠損、羞明、視力低下等)があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。」と記載されている。
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小細胞肺がん

他の抗がん剤や放射線による治療を受けたことがない小細胞肺がんの患者33名を対象に臨床試験が行われました。
カルセドによる治療を行い、がん病変にどのような変化がみられるか調べた結果、25名(76%)の患者でがん病変の縮小が確認されました。

非小細胞肺がん

他の抗がん剤や放射線による治療を受けたことがない非小細胞肺がんの患者を対象に2つの臨床試験が行われました。それぞれ61名と60名の患者が対象です。
カルセドで治療を行い、がん病変にどのような変化がみられるかを調べた結果、28名(23%)の患者でがん病変の縮小が確認されました。

副作用は、好中球減少(95.0%)、白血球減少(93.9%)、赤血球減少(92.3%)、血小板減少(47.0%)、脱毛(70.4%)、食欲不振(65.7%)、吐き気・嘔吐(58.6%)、発熱(29.8%)、下痢(16.0%)、口内炎(12.7%)、静脈炎(4.4%)がみられました。

【効能・効果】
非小細胞肺癌、小細胞肺癌

【用法・用量】
カルセド通常、成人にはアムルビシン塩酸塩として45mg(力価)/㎡(体表面積)を、1日1回3日間連日静脈内に投与し、3~4週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。


薬剤費の計算です!
身長170cm、体重60kg、体表面積1.65㎡の男性を想定し薬剤費を計算してみたいと思います。

45mg/㎡×1.65㎡=74.25mg
17,182円(50mg/V)+7,684円(20mg/V)×2=32,550円×3日間=97,650円

よって、カルセドによる治療1コースにかかる薬価は約10万円です。3割負担だと約3万円で、これを3週間毎に繰り返します。
カルセドは非小細胞肺がんや小細胞肺がんの二次治療で使用されますが、もともと薬価が安いので、アリムタを含んだ治療に比べると、経済的にも優しい治療法になると思われます。
イレッサ訴訟は、非小細胞肺癌治療薬であるゲフィチニブを服用し、間質性肺炎などの副作用で死亡または増悪したなどとする患者や遺族が、国と製薬会社を相手取り、損害賠償を求めているものです。

当初、イレッサは、臨床的因子に基づいたEGFR-TKIの個別化治療として、腺癌、女性、非喫煙者、アジア人種がEGFR-TKIの有意な効果予測因子であるとして使用されてきましたが、現在は、EGFR遺伝子変異に基づいた個別化治療に変わってきました。つまり、↓に示す「IPASS」試験などを解析したところ、EGFR遺伝子陰性例には初回治療としてイレッサを使うべきではないと言うことが分かってきました。

「IPASS」試験は、アジアで治療歴のない進行非小細胞肺癌の治療(ファーストライン治療)として、イレッサ(ゲフィチニブ)の単独療法の効果を評価する初めての第3相臨床試験です。
カルボプラチン/パクリタキセル療法と比べて無増悪生存期間(PFS)で上回り、さらに忍容性も確認されました。


セカンドライン治療として期待されていたイレッサが、間質性肺炎などの副作用で期待を裏切られた形となっていましたが、ここ最近は遺伝子変異の状況を把握して治療することにより変異陽性例では、初回治療薬として有用な薬剤として浮上してきた訳です。


【効能・効果】手術不能又は再発非小細胞肺癌
【用法・用量】通常、成人にはゲフィチニブとして250mgを1日1回、経口投与する。

薬剤費の計算です。
イレッサ250mg錠は、6,526円/1錠です。
よって、6,526円×31日=202,306円(約20万円/月)×12ヵ月=2,427,672円(240万円/年)です。
肺がんの2004年の死亡数は59,922人で、1999年の罹患数は63,317人です。死亡数は1993年に男性で胃がんを抜いて第1位に、1998年には男女合わせて第1位になりました。リスクファクターは、なんと言っても喫煙です。他には、大気汚染、職業的暴露(アスベストなど)、慢性閉塞性肺疾患などがあります。

早期の症状では、体重減少、倦怠感、食欲低下、発熱といった一般症状から、喀痰、咳嗽、血痰、呼吸困難などがあり無症状。進行すると胸膜、胸壁浸潤による疼痛や、脳転移による頭痛、骨転移による病的骨折が現れます。

肺がんは組織学的に、小細胞肺がん(15~20%)と非小細胞肺がん(80~85%)(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、腺扁平上皮がん)に分類されます。ここでは非小細胞肺がんの化学療法にかかる薬剤費を算出します。



ステージⅠ・Ⅱの早期肺がんでは、再発予防として経口UFTによる術後化学療法を行います。

<UFT療法>
UFT 250mg/㎡/day

身長170cm、体重60kgの男性の場合、体表面積は1.65㎡になります。術後2年間服用した場合、
UFT(ユーエフティー®) 250mg/㎡×1.65㎡=412.5mg(投与量)  
308.2円(100mg/カプセル)×5=1,541円×2年=1,124,930円


ステージⅢAでは、MVP療法を行います。

<MVP療法>
MMC 8mg/㎡ day 1 (4週ごと)
VDS 3mg/㎡ day 1,8 (4週ごと)
CDDP 80mg/㎡ day 1 (4週ごと)

身長170cm、体重60kgの男性の場合、体表面積は1.65㎡になります。
MMC(マイトマイシンC®) 8mg/㎡×1.65㎡=13.2mg(投与量)
516円(2mg/V)×7=3,612円
VDS(フィルデシン®) 3mg/㎡×1.65㎡=4.95mg(投与量)
14,741円(3mg/V)×1+5,391円(1mg/V)×2=25,523円×2回=51,046円
CDDP(ランダ®) 80mg/㎡×1.65㎡=132mg(投与量)  
15,970円(50mg/V)×2+8,992円(25mg/V)×1+3,651円(10mg/V)×1=44,583円

よって、1サイクルの投与に99,241円かかります。これを4サイクル繰り返すと、99,241円×4=396,964円です。切除後5年生存率はステージⅠで70%、ステージⅡで50%、ⅢA期では20~30%程度であることを考えると高額に感じます。



ステージⅢB・Ⅳでは、白金製剤を含む2剤併用療法を行います。一般的にTC療法を行いますが、GP療法、NP療法、DC療法、IP療法など、白金製剤をベースにした化学療法では効果に差がないと報告されています。

身長170cm、体重60kgの男性の場合、体表面積は1.65㎡になります。さらに今回はCBDCA(パラプラチン®)を使用するので、年齢65歳、血清クレアチニン0.6mg/dLに設定し、腎機能が正常なクレアチニンクリアランス(Ccr)100mL/minの患者を想定し薬剤費を算出します。

<TC療法>
CBDCA AUC6 day 1 (3週ごと)
PTX 200mg/㎡ day 1 (3週ごと)
4サイクル

CBDCA(パラプラチン®) AUC×(Ccr+25)=6×125=750mg(投与量)
49,959円(450mg/V)×1+19,326円(150mg/V)×2=88,611円
PTX(パクリタキセル®) 200mg/㎡×1.65㎡=330mg(投与量)
43,768円(100mg)×3+14,795円(30mg)×1=146,099円

よって、1サイクルに234,710円かかり、これを4回繰り返すので、234,710円×4サイクル=938,840円となります。

<GP療法>
CDDP 80mg/㎡ day 1 (3週ごと)
GEM 1000mg/㎡ day 1,8 (3週ごと)
4サイクル

CDDP(ランダ®) 80mg/㎡×1.65㎡=132mg(投与量)
15,970円(50mg/V)×2+8,992円(25mg/V)×1+3,651円(10mg/V)×1=44,583円
GEM(ジェムザール®) 1000mg/㎡×1.65㎡=1650mg(投与量)
26,416円(1000mg)×1+5,646円(200mg)×4=49,000円 ×2回=98,000円

よって、1サイクルに142,583円かかり、これを4回繰り返すので、142,583円×4サイクル=570,332円となります。

<NP療法>
CDDP 80mg/㎡ day 1 (3週ごと)
VNR 25mg/㎡ day 1,8 (3週ごと)
4サイクル

CDDP(ランダ®) 80mg/㎡×1.65㎡=132mg(投与量)
15,970円(50mg/V)×2+8,992円(25mg/V)×1+3,651円(10mg/V)×1=44,583円
VNR(ナベルビン®) 25mg/㎡×1.65㎡=41.25mg(投与量)
26,359円(40mg)×1+7,357円(10mg)×1=33,716円×2回=67,432円

よって、1サイクルに112,015円かかり、これを4回繰り返すので、112,015円×4サイクル=448,060円となります。

<DC療法>
CDDP 80mg/㎡ day 1 (3~4週ごと)
DTX 60mg/㎡ day 1 (3~4週ごと)
4サイクル

CDDP(ランダ®) 80mg/㎡×1.65㎡=132mg(投与量)
15,970円(50mg/V)×2+8,992円(25mg/V)×1+3,651円(10mg/V)×1=44,583円
DTX(タキソテール®) 60mg/㎡×1.65㎡=99mg(投与量)
70,893円(80mg/V)×1+20,600円(20mg/V)×1=91,493円

よって、1サイクルに136,076円かかり、これを4回繰り返すので、136,076円×4サイクル=544,304円となります。

<IP療法>
CDDP 80mg/㎡ day 1 (4週ごと)
CPT‐11 60mg/㎡ day 1,8,15 (4週ごと)
4サイクル

CDDP(ランダ®) 80mg/㎡×1.65㎡=132mg(投与量)
15,970円(50mg/V)×2+8,992円(25mg/V)×1+3,651円(10mg/V)×1=44,583円
CPT‐11(トポテシン®) 60mg/㎡×1.65㎡=99mg(投与量)
8,520円(40mg)×3=25,560円×3回=76,680円

よって、1サイクルに121,263円かかり、これを4回繰り返すので、121,263円×4サイクル=485,052円となります。

ステージⅣで化学療法を受けた場合、生存期間中央値(MST)は8~10ヶ月、1年生存率は30~40%程度です。TC療法(約93万円)・GP療法(約57万円)・NP療法(約44万円)・DC療法(約54万円)・IP療法(約48万円)と薬剤費に差があるのに効果には差がないのであれば、経済的苦痛から逃れるためにも治療法の選択は患者に委ねるべきだと思います。



再発時の2次化学療法として有用性が示されている治療法は、DTX単剤療法とゲフィチニブ内服療法です。

<DTX療法>
DTX 60mg/㎡ day 1 (3週ごと)

DTX(タキソテール®) 60mg/㎡×1.65㎡=99mg(投与量)
70,893円(80mg/V)×1+20,600円(20mg/V)×1=91,493円

よって、1サイクルに136,076円かかり、これを4回繰り返した場合、91,493円×4サイクル=365,972円となります。

<イレッサ®療法>
イレッサ® 250mg/day 連日投与

ゲフィチニブ(イレッサ®) 6,774.4円(250mg/錠)

1年間飲み続けたとした場合、6,774.4円/日×365日=2,472,656円となり、かなり高額です。ゲフィチニブは急性肺障害、間質性肺炎の副作用で問題となりましたが、東洋人(日本人)には効果があるとされており、副作用に十分気を付けながら使用することで有用な結果が得られると報告されています。
肺がんの2004年の死亡数は59,922人で、1999年の罹患数は63,317人です。死亡数は1993年に男性で胃がんを抜いて第1位に、1998年には男女合わせて第1位になりました。リスクファクターは、なんと言っても喫煙です。他には、大気汚染、職業的暴露(アスベストなど)、慢性閉塞性肺疾患などがあります。

喫煙による肺がんへの影響を計る指数として喫煙指数(pack-years)があります。これは1日の喫煙本数/20(本)×喫煙年数(年)で計算され、30pack-years以上だと高リスク群に分類されます。
1日30本のタバコを20年間吸っていたら、30pack-yearsと言うことになります。

早期の症状では、体重減少、倦怠感、食欲低下、発熱といった一般症状から、喀痰、咳嗽、血痰、呼吸困難などがあり無症状。進行すると胸膜、胸壁浸潤による疼痛や、脳転移による頭痛、骨転移による病的骨折が現れます。

肺がんは組織学的に、小細胞肺がん(15~20%)と非小細胞肺がん(80~85%)(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、腺扁平上皮がん)に分類されます。ここでは小細胞肺がんの化学療法にかかる薬剤費を算出します。



小細胞肺がんでは生物学的特性と治療法を考慮し、LD(限局型)とED(進展型)に分類されます。LD型は病巣が片側胸郭内に限局し、根治照射可能な範囲内に腫瘍が収まっている状態です。治療は、PE療法と放射線療法を併用することがあります。

<PE療法>
CDDP 80mg/㎡ day 1 (4週ごと)
ETP 100mg/㎡ day 1~3 (4週ごと)
4サイクル

身長170cm、体重60kgの男性の場合、体表面積は1.65㎡になります。
CDDP(ランダ®) 80mg/㎡×1.65㎡=132mg(投与量)  
15,970円(50mg/V)×2+8,992円(25mg/V)×1+3,651円(10mg/V)×1=44,583円

ETP(ラステット®) 100mg/㎡×1.65㎡=165mg(投与量)
7,575円(100mg/V)×2=15,150円 ×3回=45,450円

よって、1サイクルに90,033円かかり、これを4回繰り返すので、90,033円×4サイクル=360,132円となります。



ED型は、LD型の範囲を越えて腫瘍が進展している状態で、IP療法を行います。

<IP療法>
CDDP 60mg/㎡ day 1 (4週ごと)
CPT‐11 60mg/㎡ day 1,8,15 (4週ごと)
4サイクル

身長170cm、体重60kgの男性の場合、体表面積は1.65㎡になります。
CDDP(ランダ®) 60mg/㎡×1.65㎡=99mg(投与量)  
15,970円(50mg/V)×2=31,940円

CPT‐11(トポテシン®) 60mg/㎡×1.65㎡=99mg(投与量)
8,520円(40mg/V)×3=25,560円 ×3回=108,620円

よって、1サイクルに140,560円かかり、これを4回繰り返すので、140,560円×4サイクル=562,240円となります。

2001年の小細胞肺がんの治療成績では、LD型で奏功率95%、MST(生存期間中央値)28ヶ月でした。ED型は奏功率85%、MST10ヶ月とあまり良い予後とは言えない状況です。
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